公開日:2025年4月1日
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「建築物調査員・建築設備等検査員の処分基準」の制定について

一般財団法人 日本建築設備・昇降機センター

目次

1.はじめに

 有資格者以外携わることが禁じられている業務を独占的に行うことができる国家資格のことを、業務独占資格といいます。
 建築基準法第12条第1項に基づく特定建築物の定期調査又は同条第2項に基づく特定建築物の定期点検(以下「定期調査」といいます。)は、建築物調査員資格者証の交付を受けている者又は一級建築士若しくは二級建築士、同条第3項に基づく特定建築設備の定期検査又は同条第4項に基づく特定建築設備の定期点検(以下「定期調査」を含め「定期調査等」といいます。)は、建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者又は一級建築士若しくは二級建築士でなければ行ってはならない旨が規定されおり、建築物調査員、建築設備検査員、昇降機等検査員、防火設備検査員(以下「調査員等」といいます。)の資格は、当該業務独占資格に該当します。

法文 第12条第1項 第12条第2項 第12条第3項 第12条第4項
調査・点検・検査の種類 特定建築物の定期調査 特定建築物の定期点検 特定建築設備の定期検査 特定建築設備の定期点検
資格者
  • 建築物調査員資格者証の交付を受けている者
  • 一級建築士又は二級建築士
  • 建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者
  • 一級建築士又は二級建築士

2.処分基準の制定の背景

 調査員等は定期調査等の業務を独占的に行うことが認められている一方、法若しくはこれに基づく命令の規定に違反した場合、不誠実な行為をした場合又は偽りその他不正の手段により検査員資格者証の交付を受けた場合には、
法第12条の2第3項(第二号に係る部分を除き、法第12条の3第4項(法第88条第1項若しくは第3項において準用する場合を含む。)又は法第88条第1項若しくは第3項において準用する場合を含む。以下同じ。)
 の規定に基づき、国土交通大臣は当該調査員等の資格者証の返納を命ずることが可能となっています。
 今般、行政庁による処分等の判断過程をより合理的なものとするとともに、どのような行為をするとどのような不利益処分がなされるのか、国民の側であらかじめ知り、処分等の予測可能性を高めていただくことを目的として、建築物調査員・建築設備等検査員の処分基準が制定されました。
  • 建築物調査員・建築設備等検査員の処分基準 

3.意見募集の結果

 本処分基準制定に関する意見募集(パブリックコメント)の結果が添付のとおり、公示されています。
  • 建築物調査員・建築設備等検査員の処分基準案に関する意見の概要と国土交通省の考え方 

4.留意点

(1)定期調査、検査の適切な実施

 国土交通大臣が定める定期調査告示(平成20年国土交通省告示第282号)、定期検査告示(平成20年国土交通省告示第283号~285号、平成28年国土交通省告示第723号)に従って定期調査等を行わず、又は調査結果表等に記載しなかった場合は、別表1第一号の法令違反に該当し処分の対象となります。
 国土交通省が実施した「法第12条第1項及び第3項に基づき定期報告の対象となる特定建築物、特定建築設備等における有資格者により実施される定期調査等に対して、定期調査告示、定期検査告示への適合性を検証する事業」においては、これらの告示によらないおそれのある調査、検査が散見されており、特に留意すべき事項を別添のとおりリーフレットとして取りまとめています。

(2)報告書の調査者、検査者欄への記入

 定期調査報告書の調査者欄、定期検査報告書の検査者欄には、それぞれ代表となる調査者並びに当該調査を行ったすべての調査者、代表となる検査者並びに当該検査を行ったすべての検査者について記入することとされています。自らが調査等を行わないで、自らの名義で報告書を作成し、又は他人に自らの名義で報告書を作成させた場合(いわゆる「名義貸し」)は、別表1第三号の不誠実行為に該当し処分の対象となります。

5.処分を受けた検査員等の公表等

 返納処分を受けた検査員等の詳細は国土交通省のホームページで公表されることとなっています(令和7年4月頃運用開始予定)。

6.さいごに

 定期調査等は、建築物を始め建築設備、昇降機、遊戯施設等の安全性を確保するために義務付けられているものであり、同制度に対する不適切な行為は国民の信頼を揺るがすものであり、あってはなりません。
 調査員等の資格者の皆様におかれましては、その責任を自覚して業務に取り組んでいただけると幸いです。